サマータイムマシーンの夢(マキノン)
「八月」
それが彼の回答だと、気づくのに少し時間がかかった。
タイムマシーンがあったらいつに行きたい? なんて、いかにも俗な質問だ。別に、答えが返ってくるなどとは思っていなかったのだ。
八月に行きたいのか、と尋ね直せば彼は小さくうなずいたが、まるでひとごとのようだった。
さて今、カレンダーは八月である。彼は現在とも、過去とも、未来とも言わずに八月と言った。その意味を考えなければならない――つまらない意地を張っているとは自覚しながら。
「八月は……あれだな。夏でもあるし、冬でもある」
言って、俺は馬鹿なのだろうかと自問してしまった。彼はそれをひとごとのように聞いて反応を見せるでもなく、夏真っ盛りの蝉時雨の下で二人間の温度は極めて平坦だった。
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